M・クライトン「アンドロメダ病原体」と地球外生命

「ジュラシック・パーク」でポピュラーとなった、マイケル・クライトン。彼の出世作となった「アンドロメダ病原体」(1969年)は、生物兵器を開発するために人工衛星によって大気圏外から採取された病原体(「アンドロメダ病原体」と命名)の、今風に言えばアウトブレイクと「アンドロメダ病原体」の正体をつきとめて対策しようとする科学者たち、そしてアウトブレイクを想定して設立されたハイテクな研究所を描いた作品です。内容もですが、報告書という体裁をとっていて「いかにもそれらしい」インパクトがありました。

SFマガジンに掲載された広告で「肝をつぶす小説」(その他の惹句は忘れてしまいました)とあり、それにひかれた私が高校1年生くらいで本を買って読んだときは、感染や生物学的なことがらよりも、コンピューターってこんなにすごいことができるらしい!ということに感銘をうけました(今考えれば、作中でコンピューターが数字の1と小文字のエルlを打ち間違えたりするのは、どうかなあと思うのですが・・・)。
本の表紙・裏表紙が映画「アンドロメダ...」のスチルで、これまた「映画を観てみたい」という思いはありましたが、「2001年宇宙の旅」ほどの思い入れはなく、社会人になってからDVDで観ました。

さて、大気圏外に「アンドロメダ病原体」のような微生物が存在するのでしょうか。
アポロ計画の月着陸に際しては、アメリカ航空宇宙局(NASA)はその可能性を考えていて、1967年に微生物を遮断するバイオクリーンルームの規格を定め、1969年のアポロ11号から1971年の14号までは地球帰還後に宇宙飛行士を一定期間隔離して検疫を行っていました。

今は宇宙からの病原性の生物の持ち込みはないということになっているのでしょう。このとき開発された技術が、現在の病院やバイオ研究施設のクリーンルームに活かされているのですね。

一方で、星間塵の赤外線の吸収の分析から、銀河系の星間には重さにして太陽1000万個分のバクテリアの死骸が浮遊しているという見解(チャンドラ・ウィクラマシンゲとフレッド・ホイル)があります。
地球の生命は地球外から生命(の種)が伝播してきたものとする「パンスペルミア説」のひとつとして、ウィクラマシンゲとホイルは地球外で誕生したバクテリアが彗星や宇宙塵にのって地球上に到達して地球上の生命の起源となったとともに、それは現在も起こっていてバクテリア性の感染症をもたらしている、とも主張していたようです(以上はマーカス・チャウン「奇想、宇宙をゆく」より)。

ウィクラマシンゲとホイルの説は奇想天外にすぎるかもしれませんが、昨年(2016年9月)に終了した、欧州宇宙機関の探査機ロゼッタと着陸機フィラエによるチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星の探査では、生命と関わりの深い有機化合物の有無が注目され、生命の起源への関心の高さを感じました。
ナショナルジオグラフィック「チュリュモフ彗星で新たな有機物、生命起源説を後押し」
アミノ酸のグリシンや核酸に含まれるリンも存在:「ファン!ファン!JAXA!”任務達成”ロゼッタ、ミッション終了」

私自身はそれほどの根拠もなく、漠然と地球上の生命は地球上で発生した(厳密にいえば、自己複製をはじめるようになった)と思ってはいるのですが、このブログをご覧のみなさんはどうでしょう。

「アンドロメダ病原体」はアミノ酸をもたず、リンも含まず、結晶性ということなので、地球上の生命とはあまり関係がないようです。
このこと自体はストーリーに本質的なことではありませんし、そう、作中で科学者のリーダーのストーン博士が

「はたして我々は本質的に異質な生物を生物として認識できるだろうか?」

という問いかけをしていました。これはクライトン自身が「アンドロメダ病原体」で問いかけたかったことかもしれません。

この記事に関係した本

・マイケル・クライトン「アンドロメダ病原体」浅倉久志訳 ハヤカワ・ノベルス(1970) ハヤカワ文庫NV  早川書房

・マーカス・チャウン「奇想、宇宙をゆく」長尾力訳、春秋社

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コメント

  1. オーロラ より:

    こんにちは。
    あのー、「宇宙からの病原性生物」ということは、
    地球外生命体を肯定した上でなりたっている話なのでしょうか?

    今年2月に「39光年先に地球の七姉妹がいた」というニュースを見たときも、
    ワクワクしました。

    SF映画の優れた作品は、今見ても全く古くさくなくて、予想が外れているような場面がないところが、素晴らしいですね!

    • Dr.S より:

      コメントありがとうございます。
      「アンドロメダ病原体」のように、これまでに知られている地球上の生命とはかけはなれているようであれば、
      地球外生命を考えてもよいと思います。
      地球上の生命と同じような、核酸と蛋白質を基礎にした生命ですと、これまでに見つかっていなかった
      地球上の生命体であるか、あるいはパンスペルミア説を考慮することになるかと思います。
      地球に良く似た惑星で、どのような生命体が見つかるのか、楽しみですよね(^^)!