映画「博士の異常な愛情」その2

こんにちは。
映画の「博士の異常な愛情」にまつわるお話の続きです。

Wikipediaで「博士の異常な愛情」をみると、ストレンジラブ博士にはモデルとなる人物がいたかもしれないことが分かります。

モデルには『水爆戦争論』を書いた軍事理論家ハーマン・カーン、宇宙ロケット研究者でV2ロケットを開発し、後にはアポロ計画のロケット開発を主導した科学者ヴェルナー・フォン・ブラウン、あるいは髪がウェーブし、右足が革の義足だったことからエドワード・テラー、車椅子に乗っていたことからジョン・フォン・ノイマンといった水爆の開発者、ロバート・マクナマラ(彼のミドルネームはストレンジ)などと諸説ある。容姿や訛りが似ている(ドイツ生まれでアメリカに帰化したという経歴も同じ)ことからヘンリー・キッシンジャーがモデルとの指摘も多いが、演じたセラーズ及びキューブリックはこれをことあるごとに否定し、両者ともキッシンジャー自体を見たことがなかったと述べている。

(Wikipediaより)

このなかで私になじみがあるのは、アメリカのアポロ計画大好き少年(小学4年生のときアポロ11号が月に着陸)だったおかげでフォン・ブラウン、そしてコンピューターを少し学ぶと必ず名前が出てくるフォン・ノイマン、コンピューターの動作原理を考案した、というかそれも仕事の一部とした天才科学者。

あくまでも感じですが、まずフォン・ブラウンではないなあ...ロケット開発者ではあっても、核兵器に詳しかったとは思えないので。フォン・ノイマンは?ナチスを逃れてアメリカに移住しているので「総統!」と叫ぶはずはないですが、マンハッタン計画で原爆の開発に関わり、科学顧問として作戦室にいてもおかしくはない(実際そのような役割を果たしていたようです)。でもやはり、外見が・・・

フォン・ノイマンは20世紀最高の天才のひとりで、数学・物理学の広範な領域で業績を残したほか(私には詳しい説明はできません ^^;)、経済学に関わる「ゲーム理論」を創始し、先にあげたコンピューターの動作原理の考案したほか、次に書くように機械に自己複製をする能力を持たせることが可能であることを示しました。

そうそう、「博士の異常な愛情」でストレンジラブ博士が計算尺だか表だかを使って数字を出す場面がありましたが、フォン・ノイマンなら暗算で計算したのではないでしょうか。

フォン・ノイマンの著作のひとつに「自己増殖オートマトンの理論」があります。私は昔、フォン・ノイマンが「自己増殖」という生物学的な命題にどのように取り組んだのか興味を持ち、彼の数式いっぱいの仕事を理解するのは無理でも、これならばと思って解読に挑戦してみたのですが、やはり途中で論理をたどっていくことに挫折をしてしまいました。興味のある方には、京都大学の大西琢朗氏による「自己増殖オートマトンの理論」の解説が参考になるかと思います。

さて、A.C. クラークの「2001年宇宙の旅」の続編の「2010年宇宙の旅」。HAL9000の生みの親であるチャンドラ博士の部屋には「コンピューター神殿の双子神」フォン・ノイマンとアラン・チューリングの写真が掲げられています。そして、木星でモノリスに幾何級数的に増える能力があることが判明し、モノリスが自己増殖オートマトンである、ということでフォン・ノイマンに言及されています。

それでは、モノリスの自己複製の原理は「人間の真似がうまい宇宙人」とまで呼ばれた天才フォン・ノイマンが考案したものと基本的に同じものなのでしょうか、それともモノリス建造者のより高度なロジックによるものなのでしょうか...

この記事に関係のある本

・ノーマン・マクレイ「フォン・ノイマンの生涯」渡辺正・芦田みどり訳 朝日選書610 朝日新聞社

・ジョン・フォン・ノイマン A.W. バークス編「自己増殖オートマトンの理論」高橋秀俊監訳 岩波書店

・アーサー・C・クラーク「2010年宇宙の旅」 伊藤典夫訳 早川書房 海外SFノベルズ(1984) ハヤカワ文庫SF(1994)

シェアする

フォローする

コメント

  1. 映画大好きなスキーヤー より:

    ゲーム理論といえば、映画「ビューティフル・マインド」のモデルになったジョン・ナッシュが有名ですよね。
    どう違うのでしょうかね(^_^;)
    コンピューターの概念を生み出したアラン・チューリングの伝記映画「イミテーション・ゲーム」とか、
    結構映画ネタになってるんですね~、数学者って。

    • Dr.S より:

      コメントありがとうございます。
      ジョン・ナッシュは「ゲームの理論」の特定の条件での解(ナッシュ均衡)を発見したという風に理解していますが、
      私にも難しいです(^^;) 「ナッシュ均衡」についてはこちらにやさしい説明が。
      数学者って、映画になりそうなドラマチックな生涯を送っている方も多いです。数学者の伝記で、すこし古いですが
      E.T. ベルの「数学をつくった人びと」は面白いですよ!