天才たちの奇妙な楽園で、星に想いを。

こんにちは。
前回「博士の異常な愛情」のストレンジラブ博士のモデルはジョン・フォン・ノイマンとは違うだろう(違っていてほしい?)という話を書きました。今回、フォン・ノイマンのつながりで思い浮かんだことを。

フォン・ノイマンはその才能を評価されて1929年に26歳でアメリカに招かれ、翌年、ニュージャージー州にあるプリンストン高等学術研究所の開設にあたってその教授となりました。そして、同様にプリンストン高等学術研究所の最初の教授となっていたのは、アルバート・アインシュタインでした。フォン・ノイマンとアインシュタインはお互いの天才を認め合っていたようです。

フォン・ノイマンに比べてアインシュタインは有名なだけあって、映画にいくつか登場しています。私が観たのは「星に想いを」と「マリリンとアインシュタイン」です。「ヤング・アインシュタイン」も有名だと思うのですが、まだ観ていません(こんど観てみようかな)。

あと、番外ですが「アインシュタインの脳」。これにはぶっ飛びました。アインシュタインの死後彼の脳は無断でホルマリン漬けの標本にされたのですが、行方がはっきりせず、日本人の大学の先生がそれを探すというドキュメンタリーです。

で、私が大好きな映画は「星に想いを」です。アインシュタインをウォルター・マッソーが、アインシュタインの姪(実在はしていないですが)をメグ・ライアン(私は彼女のファンです)が演じています。ティム・ロビンス演じる自動車修理工がメグ・ライアンに恋をして、それをアインシュタインとその友人たちが助ける、という他愛ないコメディーです、が・・・

この映画になにより参ったのは、アインシュタインの友人たちとしてクルト・ゲーデルとボリス・ポドルスキーが登場したこと。

ゲーデルといえば「矛盾した言明がない体系では証明できないことが存在し、すべての言明が証明できる体系には矛盾が存在する」という(この理解でよいのかな?)「不完全性定理」で名を残す論理学者、ポドルスキーはアインシュタイン、ネイサン・ローゼン(映画ではネイサン・リープクネヒト?)とともに「量子力学が正しいとすると、光速より速く情報は伝わらないとする局所性が破綻するので、量子力学は間違っている」ことを主張する「EPR(3人の頭文字)パラドックス」を考案した物理学者です(実験の結果、皮肉なことに量子力学の方が正しいことが示されています)。この二人が映画に出てくるとは思いもよりませんでしたし、しかもそれなりに似ている!


映画の終わり頃、アインシュタインがメグ・ライアンに方位磁石を渡しながら「私は子供の頃、磁石の針がどうして北をさすのかが不思議で、それからずっと研究を続けてきた」と言いますが、これはアインシュタインの実際の言葉です。そして映画では「これをあげよう、お前が道に迷わないように」と続き、しんみりさせられます。
それやこれやで、ハリウッドのリサーチにつくづく感心してしまいました(かなりしっかりしているので、ネイサン・ローゼンについては、映画化に当たって関係者の同意が得られなかったので名前を使わなかったのでは、とすら思えます)。

プリンストン高等学術研究所でのアインシュタイン、ゲーデル、そしてフォン・ノイマンの様子はエド・レジスの「アインシュタインの部屋—天才たちの奇妙な楽園」に面白おかしく紹介されています。

天才たちがキラ星のごとく集っていた(いる)プリンストン高等学術研究所。映画「星に想いを」の原題は「I.Q.」です。正直なところ、私には最初「星に想いを」が陳腐なタイトルに思えたのですが、映画のなかで「星」に結びつく話が重ねられていることを考えると、「星に想いを」は− 原題を超えて− うまいタイトルだなあ、と思えます。

この記事に関係のある本

エド・レジス「アインシュタインの部屋—天才たちの奇妙な楽園」大貫昌子訳 工作舎 (1990年)

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コメント

  1. 映画大好きなスキーヤー より:

    また立ち寄ってしまいました。
    私も「星に想いを」は大好きです。
    難しいそうな理論や実在のエピソードがコメディの中に散りばめられていて、
    楽しめるし、感心します。
    ところで「アインシュタインの脳」の話、ドキュメンタリーということは本当の話なんですよね!?
    ホルマリン漬けにされた彼の脳が、行方不明になって、
    しかも日本人が探すなんて!
    もっと有名になってもよい事件ですねぇ。

    • Dr.S より:

      コメントありがとうございます(^^)。
      プリンストン大学の病理学者のトマス・ハーヴェイが家族に無断で標本にしたアインシュタインの脳は、切り分けられて世界の各所に分与されたようです(日本では近畿大学と新潟大学脳研究所が所蔵)。脳の標本を調べて、アインシュタインの天才の秘密を脳から説明しようという試みも多いようです。
      ドキュメンタリーになったのは、近畿大学の杉本賢治助教授(当時)が、プリンストン大学が保管しているはずの標本を探してみたら大学にはなく、トマス・ハーヴェイを手がかりにアメリカ各地を探してまわるという話です。