11月で2016年に禁煙をしてから3年になりました。それまで、40年間煙草を吸っていました。
禁煙には16年前にいちど、スキューバダイビングをはじめたのをきっかけにトライしてみました。当時薬局で買えるようになったニコチンガムを噛みながら4ヶ月ほど我慢しました。お金の面では煙草を吸っているより高くついたかもしれません。しかし、出張で泊まったホテルでつい吸ってしまい(当時は独り住まいでしたが、それでも外泊で開放感があったのでしょうか)、あと家に帰っても禁煙できず、結局禁煙は破綻してしまいました。ダイビングの後の一服もたまりませんでしたし…
今回のきっかけは、はずかしながら交通違反。朝の時間帯の進入禁止に気がつかず、前の車について行ってしまい、つかまって反則金8000円。落ち込んだ挙句、その8000円の分相当の煙草20箱を吸わないでいようと思ったのです:1日1箱ほどでしたので20日間の禁煙になりますが、もしそれ以降も禁煙を継続できれば、交通違反で捕まったのもそれなりの意味があったと考えられるのではないかと思われました。
前回の経験から自分にはニコチンガムやニコチンパッチによるニコチン補給はそれほど禁煙の助けにならないと思われましたので、それらは使わず普通のガムやフリスクでしのぐことにしました。
泣きたくなることも何度もありました。その一方で、1日のうち午後3時あたりから1時間ほど喫煙への欲求がおさまるという、不思議な経験もしました。これで楽になるかも…と思いきや、それを過ぎるとはまた喫煙への欲求が再燃です。なぜその時間だけ、というのか今でも不思議です。
そうしてなんとか20日間禁煙すると、これだけ吸わないでいたのにもったいなく、「もうちょっと頑張ってみよう」と思え、それをつないできました。あと、独り身でなくなったということも大きいかな。
タバコのかわりにガムがやめられなくなるのではないかと心配したのですが、幸か不幸か、3ヶ月ほどしたら、おそらくガムをかみすぎたおかげで虫歯の詰め物が抜けてしまい、治療して(特に仮の樹脂の詰め物をしている間)以降、ガムへの依存も断ち切らざるを得なくなりました。
体重はかなり増加。食欲がふえるとは言われますが、それより脂質の代謝が影響をうけたのかなと思っています:禁煙してしばらく後の検診で、高脂血症を疑われる結果となりましたが、その次には正常(ただメタボ体型)になりました。
そうして3年。数日前、不思議な夢を見ました。禁煙を3年とはいうけれど、でも時々吸っていたよね… そうして、煙草を一服する夢。
現実には全く吸っていないのです。煙草を吸ってしまう夢は、確かに何度も見ました。どうやら、夢は夢で「時々吸って3年経過した」というストーリーを堅持しているようなのです。
ひょっとしたら「時々吸って3年経過した」自分がいる並行宇宙と意識がつながっているのかもしれません。しかし、並行宇宙があるならば、「苦労なしに禁煙して3年が経過した」宇宙もあるはずなので、そこと没交渉なのはどうしてでしょう。いまだに喫煙への欲求があるので、「時々吸って3年経過した」方に共鳴しているのでしょうか。
さて、いつになったらタバコへの欲求から解放されるのやら。やめてみたら案外楽にやめられた。という人もいるので、人それぞれと思いますが、自分の経験では、喫煙はやはり依存性がとても強く、なかなかやめられない・忘れられない。科学的にも、ニコチンは脳のアセチルコリン受容体に結合し、「達成感」を感じさせるドーパミンの放出を促すというのですから、依存性が強いのは当然だと思います。
ちなみに、このブログでも紹介したSF作品でも煙草はしばしば出てきています。「博士の異常な愛情」では、基地司令官が葉巻を吸い続けていますし、ストレンジラブ博士も苦労しながら煙草に火をつけている。バラードの「時の声」でも登場人物が煙草を吸っています。映画「星に想いを」のアインシュタインはどうだったかな?実際のアインシュタインにはパイプをくわえた写真が残っていますね。
映画「ブレードランナー」(1982年)では、はじめの方で、レプリカント狩りの捜査官「ブレードランナー」は煙草を吸いながら、被験者がレプリカントかどうかのテストをしている(レプリカントを挑発している?)。その後、ヒロインのレイチェルがブレードランナーのハリソン・フォードからレプリカントかどうかのテストを受ける場面では、レイチェルの方が「煙草を吸っていい?」と訊いて、ハリソン・フォードにどうぞと言われて煙草を吸いながらテストを受けていました。ちょっと苛立った・なげやりな雰囲気。煙草の煙が絵になっている映画でした。続編の「2049」の方には煙草の煙はなかったかな。
では逆に「禁煙」がでてくるSF(映画)。これは案外少ないかも。
映画「アンドロメダ」(原作はM. クライトンの「アンドロメダ病原体」)では、「ワイルドファイア研究所」に入る時に研究者が煙草の箱を捨てさせられていたような..うろおぼえですが。
J. ヴァーリイ原作の映画、「ミレニアム 1000年紀」。煙草を吸っているヒロイン、ルイーズ(シェリル・ラッド)− 大気が汚染された未来から20世紀に来て、清浄な20世紀の空気には不足している汚染物質分を煙草で補っている − に、主人公のビル・スミス(クリス・クリストファーソン)が「僕は煙草をやめたよ。何年もかかったよ」というシーンがありました。
ほかに禁煙で苦労している登場人物がでてくる SF はいまのところ思い出せないです… 最近読んだ(話題の)劉慈欣「三体」では、主人公がストレスに負けて禁煙を破って煙草を吸う場面がありました。でも禁煙に苦労したとかつい吸ってしまうにあたって葛藤があったとかは書いてなかったです:そんなことストーリーとは関係ないですものね。でも、「三体」での煙草は、主役のひとりである警官がふてぶてしく吸っていることもあり、しぶとさの象徴になっているという気もしました。
こんな風に煙草のことを考えていると、いつまでたっても煙草を忘れられない・禁煙にならないというのもアタマで理解はしているのですが… 禁煙に何年もかかったというビル・スミスの言葉、禁煙していなければ説教くさいと思うところですが、今の私には、そうだよねと共感してしまいます。ヴァーリイの原作にはなかったと思うので、映画の脚本家が自らの経験を台詞に加えたのかもしれません。
そうして… タバコの是非は括弧に入れて、私の煙草の煙でこれまで不愉快な思いをさせてしまった方々にはともかくおわびを。