AIは第2ファウンデーションを見つけられるか?

今年の2月に、Googleがモザイクのかかった画像から、モザイクをかける前の画像を推定する技術を開発したと報じられました。機械学習の応用のようです。「モザイクの部分にあてはまりそうな元画像をAIが探し出す」という原理でしょうか。これってAIが一種の「勘」を働かせるといってよいのでは?


J-CASTニュース「モザイク画像が鮮明に! GoogleのAI開発に期待と妄想」より

「直感」に比べると、「勘」という言葉にはどこか日本的な響きがありますが、定義はともかく、AIが「勘」を持てるかどうか、iPS細胞をつくり出し、2012年のノーベル医学生理学賞を受賞した京都大学の山中伸弥先生と、将棋の羽生善治名人が対談をしています。山中先生も羽生名人も「勘」をすごく働かせているのですね。
(週刊現代【頂上対談】山中伸弥×羽生善治「AIは”勘”を再現できるか」:記事動画

さて、「勘の良い」人間が登場するSFといえば、アイザック・アシモフの「ファウンデーションの彼方へ」でしょうか。主人公のゴラン・トレヴィズは本人曰く「ほとんど何も(情報が)ない状態から正しい結論に至る天分があり、正しいときにはそれが確かだという感覚が持てる」。

私がアシモフのファウンデーション・シリーズに触れたのは、小学生の5年生か6年生の時に、集英社の「ジュニア版・世界のSF」シリーズ「滅びゆく銀河帝国」を読んででした。未来を予測する学問「心理歴史学」の細かいところはともかく(子供向けに、どんな説明になっていたのでしょうね)、「壮大に未来を予言する」ことに憧れたことをおぼえています。

アシモフのファウンデーション・シリーズに影響を受けた人は多いようです。2008年にノーベル経済学賞を受賞した経済学者のポール・クルーグマン氏や米国下院議長をつとめたニュート・ギングリッチ氏のような高名な方々も。日本人ではどなたでしょうね。ファウンデーション・シリーズと心理歴史学については、また別に書いてみたいと思っています。

「ファウンデーションの彼方へ」(1982年)は、あれ今頃ファウンデーション・シリーズ(1942年〜1953年)の続編が?という印象でした。主人公のゴラン・トレヴィズが、「心理歴史学」の予測が正しいというより、予測を成就させるために活動している「第2ファウンデーション」が存在をしていることを感知して、「勘のよさ」をいかして「第2ファウンデーション」を探索する、という話になっています。読み始めると夢中になり、一気に読んでしまいました。

モザイク画像からの元画像の推定にならって考えれば、「勘のよさ」というのは、「その状況に類似した状況についての知識をもっており、当てはまりそうなものを使って情報が欠落しているところを思い出し・補完する」ことになるようです。これは、これまで人間の「直感」や「勘」について論じられていることのひとつであると思いますし、AIに実装できるのではないでしょうか。

ただし「ファウンデーションの彼方に」のトレヴィズは「第2ファウンデーション」の探索にあたって、それほどの「類似した状況」の経験を蓄積しているようには思えないし、また原文では「直感 intuition」という言葉を使っておらず、”gift of coming to a correct conclusion”「正しい結論に至る天分」といっているところが微妙です。アシモフはトレヴィズの特異な能力ということで、「直感」をあえて使わなかったのかもしれません。

AIは人間的な直感や勘(あるいはそう呼んで差し支えない能力)を持つことができるでしょうか。そしてさらに、トレヴィズのように、経験のない事柄に対しても(どこからか適用できる知識を探し出してきて?)正解にたどりつくようになるでしょうか?

この記事に関係した本

アイザック・アシモフ「ファウンデーションの彼方に」岡部宏之訳
海外SFノヴェルズ(単行本、絶版)、ハヤカワ文庫SF(上・下)

中山正和「カンの構造 – 発想をうながすもの」中公新書174 中央公論新社

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